国宝 百済観音
―謎多き飛鳥仏の美に迫る―
くだらかんのん
百済観音
モデルは奈良の国宝「木造観世音菩薩立像」。
百済観音の通称で人びとを魅了する美しい像です。
直線と曲線が織りなす 軽やかで優美なシルエット
腰高ですらりとした八頭身の美しいプロポーションは、まるで宙に浮いているかのような軽やかさ。
横からの拝観をも想定した天衣はやわらかなカーブを描き、下へいくほど幅広となっています。曲線の天衣が直線的な体躯と組み合わされているのも造形表現の特徴のひとつです。
厳かさよりもやわらかさ 親しみ感じる飛鳥仏
百済観音は7世紀半ば頃、飛鳥時代に制作されたと見られますが、多くが厳粛な雰囲気を持つ飛鳥仏においては異彩とも言えるやさしい表情をしています。
特に小さな目や口は楚々とした印象を与え、アルカイックなスマイルが多くの人に愛される所以です。
そっと前に差し出された右手は観音の優しさを表します
天衣の曲線と体躯の直線の見事な対比
美しいカーブを描く天衣は横からの拝観を想定したデザイン
2メートルを超える大作でありながら、1698(元禄十一)年の資料に名が記されるまで千年もの間の記録が見つかっていないという伝来の謎もまた魅力のひとつ。
明治時代に「百済観音」の名で広く知られ、その姿から「せいたか観音」や「酒買い観音」といった愛称もつけられました。
イスム 百済観音
その魅力
阿弥陀を戴く宝冠が発見されたことで、この像が観音菩薩であることが判明しました
宝冠の中には隠された双髻(お団子状に結われた頭髪)
彩色が失われていますが、肩にかかる髪も造型されています
絶妙な色合いの光背をすべて手彩色によって表現
聖徳太子の王子が使ったという「王子型」と呼ばれる水瓶
他に作例の見られない珍しい五角形の台座