イスム2020年スタンダードシリーズの新作、国宝「木造 十一面観音立像」をモデルに制作した像を発売します。
鮮やかな色合いと、小ぶりな頭部がやわらかな印象を与えるこの像は、白洲正子や和辻哲郎など多くの文化人を魅了してきた名作。
お客様からのリクエストも多かった平安期の美仏が、いよいよイスムに登場です。
小さく造られた頭部とすらりとした腰高スタイルで長身なイメージを与えながらも、側面から見ると実は木彫像のたっぷりとした量感も感じさせる見事な造型。
ふくよかで愛らしい女性的な尊顔と、極彩色の絵画のような後補の板光背が強い印象を与えます。この洗練された作風が制作者の「美」へのこだわりを強く感じさせます。
あらゆる困難を救う十一面観音
十一面観音は、衆生の様ざまな困難や苦しみに対応するため、すべての方向に顔を向けた観音菩薩です。日本では平安時代以降、民間信仰と結び付き広く信仰されるようになりました。作例は各地に遺されているものの、国宝指定像は当像を含んでもわずか7体しかありません。
十一の面の並びはいくつかのパターンがありますが、どの場合でも頭頂部に悟りの境地を示す如来像(仏面)を頂いています。
イスムこだわりの造型
表情
まるく膨らんだ頬と小さくすぼまった口が、まるで実在する少女のよう。茫洋とした不思議な印象を与えるその表情は、苦心の末に到達したイスム造形の真骨頂。
十一の小面
菩薩面3つ、瞋怒(しんぬ)面3つ、牙上出面3つ、頂上如来面1つ、そして後頭部の大笑面1つと、それぞれの表情の違いにこだわって造型しています。
天冠台冠飾
これまで制作した金属製パーツの中で最も小さく、開発に困難を極めた冠飾。細かなパーツと頭部を合わせるサイズ調整にも時間を要し、何度も試作を重ねました。
瓔珞
瓔珞(ようらく)は体躯と一体化させて造型していますが、右胸と条帛の間など一部を立体的に仕上げることで像の臨場感を強調しています。
光背
そのほとんどを彩色で描き表す光背「板光背」を、イスムの技術で余すところなく再現。一つひとつ手描きで仕上げた美しい文様が、観音像の美を一層引き立てます。
衣文
大小の波が交互に現れる翻波(ほんぱ)式と呼ばれる衣文表現は、平安前期の仏像に多く見られる特徴。ここまで再現するのがイスムのこだわりです。